一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~

周りから固めよ

「これはこれは、萌音ちゃんじゃないか。お父さんも後で顔を出すと言っていたけど、今日は別々に来たんだな」

「ええ、父とは一緒に住んでるわけではありませんからお互いのスケジュールは把握しておりません」

父親である長嶺教授絡みで、萌音の存在も建築業界ではある程度知れ渡っている。

だか゛長嶺教授の娘゛としてではなく゛友人の娘゛として接してくれる湯浅会長のことを、萌音は結構好きだった。

「佐和山建設に入ったのか。社員としてもお嫁さん候補としても、゛萌音ちゃん争奪戦゛は激しかったと聞いてたけど、やはり本命馬が勝利をさらっていったか・・・」

「当たり前です」

萌音は、父には初めから佐和山建設しか薦められていない。

湯浅の言動と海音のリアクションに、頭の中で?が飛び交う萌音だったが、

「萌音ちゃんのマンションの建築模型も展示させてほしいとお父さんに頼んだんだが、萌音ちゃんが実際に住み始めた以上、防犯の観点からこれからはどこにも公開したくないってごねてさ」

という、湯浅の言葉にその疑問もすぐに頭から消えていった。

「一定期間、モデルルームとして開放してたくせに何を言ってるんだか・・・」

萌音が可笑しそうに笑うと、湯浅の隣に立っていた女性がすまなそうに話に割り込んできた。

「会長、そろそろ式典の方に向かいませんとお時間に間に合いません」

「ああ、そうだな。それでは海音くん、萌音ちゃん、展示会を楽しんで」

湯浅はそれだけ言うと、秘書らしきその女性を引き連れて会場を出ていった。

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