転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
第五章 騎士団員をもてなすのは、三種の丼です
その噂が皇宮中を駆け巡ったのは、イローウェン国王夫妻が到着して十日ほど経った、婚約式まであと三日という日だった。
 皇帝が、倒れたのである。

「――まさか、毒を盛られたとか?」

 ヴィオラが真っ先に思ったのは、それだった。もちろん毒見役はいるのだが、皇宮ではしばしばこういった事件が発生する。
 けれど、ニイファは首を横に振った。

「わかりません。かん口令が敷かれておりまして……」
「そうよね。そんなことべらべらしゃべらないわよね」

 こういった時、かん口令が敷かれるのは当然のことだ。
 だが、今は婚約式が控えている。皇帝が出席できなければ挙式できないため、おそらく延期になるだろう。
 ヴィオラが皇妃の部屋に呼び出されたのは、それからすぐあとのことだった。皇妃は難しい顔をしている。

「――陛下のご病気のことは聞いていますね?」
「倒れられたという噂は聞きました」

 ソファに座っている皇妃を守るように立っているリヒャルトは、ヴィオラに向かって頭を下げた。

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