たとえ君が・・・
第5章~たとえ君が・・・~
「大丈夫か?」
渉は患者の様子が落ち着くと屋上に向かった。

そこには渉の予想通り多香子がいた。

「見て・・・」
多香子は渉にそう言って空を指さす。

すっかり暗くなった夜空に、初雪が舞っていた。

「きれいだな・・・」
「うん・・・」

多香子の横に立ち、渉は多香子を見る。

多香子は空を見上げたままでいる。

雪が多香子の頬につき、やがて雫となって涙のようだった。
< 101 / 306 >

この作品をシェア

pagetop