たとえ君が・・・
第八章~たとえ君が前に進むときも~
「もうすぐ新年ですね。」
「そうね。」
ナースセンターで夜勤の看護師と多香子は話していた。
最近、多香子の雰囲気も変わり、看護師や助産師から話しかけられることが増えた。
初めて多香子の笑う表情を見ることのできた同僚たちは目を丸くして驚いたり、喜びの声をあげるほど、注目の的だ。

大みそかの病院はやけに静かだ。
いつもよりも患者の数も減っていて、入院している患者も経過が良ければ退院をしたり、受診する患者もさすがに大みそかや元旦は少なかった。
日中は入院患者のお見舞いも多かったが、夜になるとかなり静かだ。
多香子は独身のナースとペアを組み、夜勤の勤務にあたっていた。
「瀬戸さんはどこにも行かないんですか?」
「お正月?」
「はい。」
「実家くらいかな。」
「先輩は5日からですよね?休み。」
「うん。」
多香子は正月を毎年ずらしてとる。そのほうがゆっくりとできるからだ。
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