たとえ君が・・・
第四章~たとえ君が僕を選ばなくても~
寒い冬の風が吹き始めたころ、多香子は手術室にいた。
手術用のベッドには堕胎手術を控えた患者が座っていた。

離婚が決まってから妊娠が発覚した女性がそのベッドに座っていた。

いよいよ手術の当日。
担当するのは渉と多香子だ。

「これから全身麻酔をします。目を覚ました時には手術は終わっています。終了後一時間はベッドの上で安静にしていただきます。その後、着替えを済ませてから帰宅できますので。」
多香子は淡々と説明をするが、患者はかなり不安そうな表情をしている。
説明を終えた多香子が患者にベッドに横になるように言うと患者が話始めた。
その手にはついさっき、手術前の簡単な検査で撮った超音波写真があった。患者はどうしてもその写真が欲しいと言った。
「こんな決断をするなんて、私は一生幸せになれないですね。」
「・・・」
「でも、私が一生不幸になってもいい。それでも、この子を産んでも幸せにできないならこの命を産むわけにはいきません。」
「・・・」
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