シンデレラには····程遠い
到着 日本

「皆様、ただいま空港に到着致しました。」
と、キャビアテンダントの
綺麗な声をききながら
胸が、ドッドッと
大きな音をたてている
興奮もあるのか手足も
少しふるえている

少しの手荷物を持ち
通路に立ち
回りにあわせて前に進む

飛行機の出口で
キャビアテンダントの方々が、
良いご旅行を、と
言って頭を下げている。

私の旅行は、終わった。

これからは⋅⋅⋅⋅⋅
と、思いながら
回りの人の波と一緒に
到着ゲートへと進む。

キャリアケースに詰めれる物
以外は送ることにした。

後の物は、現地で引き取って
貰えるように絢斗さんが
手配してくれた。

この一年は、日本へ帰らず
絢斗さんもフランスに
来なかった。

いや、来ないで。と
私がお願いした。

会えば、別れが辛くて
毎回、絢斗さんを困られていた。

絢斗さんは、問題ないと
言ってくれたが⋅⋅⋅⋅⋅⋅

やりたくて、夢だった
フランスでの仕事。
きちんとやりとげたかった。
投げ出したくなかった。

でも、そんな大切な
私の夢も⋅⋅⋅⋅⋅⋅
絢斗さんと離れるときに
かまわない⋅⋅⋅⋅と
簡単に思ってしまう

それだけ、絢斗さんに
溺れている。

だが、これから
藤堂・クラーク・絢斗の妻と
なり、彼の横に立つなら
きちんとしていたい
せめて⋅⋅⋅⋅と、思った。

絢斗さんに言ったら
笑われるだろうが
それだけ、いや、それ以上に
彼は、素敵な人だ。

こんな凄い人が
なぜ⋅⋅⋅⋅⋅私を⋅⋅⋅⋅⋅⋅と⋅⋅⋅⋅⋅思うが⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅

キャリアケースを見つけて
コロコロと引きながら
ゲート出口に向かう

回りを見渡すと
ゲート口の横に
こちらを見ている
絢斗さんが見えた。

でも、直ぐに霞んで見えなくなる
ちゃんと見たいのに
ただいま、って、言いたいのに

絢斗さんが、クスッて
笑ったように見えた
と、思ったら
身体が動いていて
私は、私の大好きな人の
腕の中にいた。
「鈴香、お帰り。」
と、私の大好きな声で
言ってくれる絢斗さんに
「⋅⋅⋅⋅ただ⋅⋅いま⋅⋅⋅っ」
と、言うと
「ああ。待っていた。
もう、二度と離れない。
離さない。」
と、言われて
うん、うん、と頷き
「⋅⋅⋅⋅⋅あいた⋅⋅かった⋅⋅⋅⋅
でもっ⋅⋅⋅負けたく⋅⋅⋅なか⋅⋅⋅った⋅⋅⋅⋅」
と、言うと
「良く、頑張ったな。」
と、背中を撫でてくれて
「鈴香。俺も会いかった。
どれだけ、こうやって抱き締めたかったか」
「ごめんなさい。わがままばかり⋅⋅⋅⋅⋅」
「問題ない。こうして抱き締められた。」
と、優しい声で言われて
何度も頷くと
絢斗さんに涙を拭かれて
手を繋ぎ、片手で私の
キャリアケースを引いて
空港を後にする。

空港の到着ゲートの
ざわつきも気づかずに⋅⋅⋅⋅⋅

絢斗さんの車に乗り
「お仕事、大丈夫でしたか?」
「問題ない。あいつらもわかってる。」
「快斗さんも潤さんにも
お礼を言わないと。」
「鈴香の元気な顔を見せてやればよい。
ご両親には、連絡を。」
と、言われて
私の両親の事もきちんと考えてくれる
絢斗さんに
はい。と答えて
実家に連絡をする
元気良く電話に出たお母さんに
笑みがこぼれる。
「いま、日本に着いたよ。
うん、うん。絢斗さんが
迎えにきてくれた。
うん。お父さんにも伝えてね。」
と、話していると
絢斗さんがスピーカーに
するように手でしめすから
そうすると
「お母さん、絢斗です。
近い内にお邪魔します。
お父さんにもお伝えください。
はい。また、そのときに。」
と、言うと母は電話を切った。

私が、ん?と絢斗さんを見ると
「結婚の話を進める。」
と、言われて
真っ赤になる私の頭を
絢斗さんは、優しく撫でてくれた。
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