ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ3:彼女と俺を繋ぐもの
【Hiei's eye カルテ3:彼女と俺を繋ぐもの】
「日詠先生、さっき入院された妊婦さんの情報、ご本人から取れました。」
『名前も?』
「ええ。まぁ、点滴ルートを自己抜去しちゃう人なので、もしかして名前を教えてくれないかも・・・と思っていましたが、ちゃんと答えてくれました。自殺しようとして助けられてここに運ばれたことも。」
産科病棟看護師の河野さんに給湯室で声をかけられた。
彼女、看護師さん達に警戒されているな・・・と心の中で溜息を付きながらも、まだ教えてもらっていないことを再び聴く。
『で、名前は?』
「えっと・・高梨伶菜さんです」
『・・・・・・・』
「日詠先生、マグカップ、危ない!!!!!」
食器棚から取り出して左手に持ったままの自分のマグカップを落としそうになっていたらしい。
『助かったよ。マグカップが。』
「そういう時、割れて自分の手が怪我するとかを心配しません?」
『いや、そこまで考えられていなかった。』
それに気がつかないぐらい俺は彼女の名を耳にしたことによって放心状態になっていたらしい
なんとなく彼女が高梨伶菜という人物であることは予想はしていたのだが、現実なんだということを改めて感じて
仕方ない
彼女のことをずっと捜していて、それでも、ずっと見つからなくて
その状態が続き、半ば捜し出すことに諦めかけていたぐらいだ
彼女の母親に瓜二つの彼女だったから
おそらく彼女は俺が捜し求めていた人物だろうと踏んではいたものの
もしかして、ただ似ている人かもしれないという想いを拭い去ることはできなかった
それぐらい今のこの状況は自分にとって空想の世界にいるような気分