ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Hiei's eye カルテ4:すれ違う過去と重なる現実
【Hiei's eye カルテ4:すれ違う過去と重なる現実】
伶菜の切迫流産に対する治療は順調に進み、ベッド上から動けない絶対安静状態を解除できるまで安定した。
入院当初、看護師さん達に精神不安定な患者として要注意人物視されていた伶菜。
今では彼女達とも他愛のない話とかで盛り上がったりするぐらい看護スタッフとの関係もいいようだ。
それだけでなく、屋上でメロンパンを食べながら休憩してきた俺とも話したりするようになったぐらい。
お互いの父親の話も。
伶菜の父親がプラネタリウムの研究員をしていたと言い伝えられていたのには正直驚いた。
伶菜の父親が亡くなる直前までの彼のことを俺は知っていたから。
「先生のお父さんはどんな仕事していたんですか?」
それは今の俺に繋がる最も大切な記憶
それを伶菜も母親から聴かされたりして知っているのだろうか?
でも知らされたりしていたら、父親がプラネタリウムの研究員をしていたなんて聴かされたりはしなかっただろう
過去の真実を知っている人間は
もしかして、俺と福本さんだけかもしれない
伶菜がもし、その真実を知ったら
『・・産婦人科の医者だった・・・かな?』
「・・かな?って・・・覚えてないんですか?」
彼女は何を想い
そして
彼女と俺の繋がりはどうなってしまうのだろう?
『いや~どうかな・・・・そういえば」
「そういえば?・・・・・その後は?」
主治医と患者という関係である今、お互いに過去の事情とかを考えることが得策だと思えなかった俺は笑って誤魔化す。
父親だけでなく母親も病気で亡くした伶菜
彼女は今まで充分辛く苦しい想いをしてきたのだろう
本当なら俺が知っている過去の真実を言いたい
だけど、それを今、伝えることが
果たして伶菜にとって幸せなことなのかわからない
『じゃ、また超音波検査やっても、逃げたしたりしないよな?』
だから俺は彼女の主治医という立場で、彼女の傍に居よう
この時はそう思った。