いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
嫌いになりたい

最寄りの駅を出ると、もう既に朝の8時半を過ぎてしまっていた。
真衣香はふらつく身体に力を込めて、足を踏ん張り、会社へと急ぐ。

普段は10分もあればメイクが終わる地味な顔面だと自覚がある真衣香だが、今日は違った。
いつもより厚くつけたファンデーション。
擦り過ぎて赤くなった目のまわりをコンシーラーで丁寧に隠す。それでも腫れぼったさが消えないからと、ブラウンのアイシャドウを濃く入れた。
するとコントラストの関係か、眉毛が薄く見えたのでもう少し太く書き足してみる。

と、いう。寝坊したうえに、そんな慣れないメイクで更にバタついた真衣香の今日の朝だった。

(……こんな時間に出勤したの、総務の引継ぎされてから初めてだ)

通勤する人の波に押されるようにして歩く。ボーッとしていても進むべき道がわかっているのは、今に限って言えば幸せなことだった。

寝不足か、それとも泣き過ぎたせいか。霞む眼を擦っていると、泣きじゃくることしかできなかった……あの夜を思い出す。まだほんの数日前。

――そう、あの日、金曜日の夜のことだ。

< 164 / 493 >

この作品をシェア

pagetop