いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
社内恋愛の極意とは②


***


会社帰りに坪井と過ごしてから、翌々日のことだった。

真衣香の目には、フロアに敷き詰められているオフィス用のカーペットの生地が映っていた。

「も、申し訳ありませんでした」

朝一番、営業部に呼び出された真衣香は小野原と森野に頭を下げている。
その、真っ最中だ。

理由は一昨日、小野原に頼まれた入力の仕事。
単純作業にも関わらず、あの作業の中で大きな入力ミスがあったのだという。

(どう考えても坪井くんが間違えるわけないし、私が入力した部分だよね……)

数日前のように、まだ社内に人はまばらで営業部も数人しか出勤していない時間。
静まり返っている為、頭上から小野原が大きく息を吐く音がハッキリと聞こえた。

真衣香はピクリと肩を震わせる。

「……まぁ、いつもの立花さんの仕事ぶりを信用してさ、頼んじゃった私も悪いんだけど」
「す、すみません」
「私に謝られてもね」

真衣香が依頼された入力作業は卸業者を通さず直接取引をしている大型小売店からのクレーム内容と、その改善案をまとめてデータ化させるというもの。

うち一件に対して早急な対応が必要だった為、あの日は翌朝までにと依頼をされていたようだ。

「昨日の朝イチで、坪井くんと組んでるうちの営業に電話が入ったの。 伝えてた期日までに回答と改善案がなかったから、陳列を見直したって」
「わ〜、うちの商品目立たないとこに下げられちゃってますよね」
「一応すぐにその営業がフォロー行ったけど、今更何しに来たってご立腹だったらしくてね」

小野原の冷静な声と、森野のからかうような声。

真衣香のミスは、数点あったクレームのうち解決済みではないものを完了とし、実際には出向かなくてもよかったトラブルの無い小売店にクレームフォローへ行かせてしまった。

結果、朝イチで対応を待っていた小売店側にフォローができていなかったというものだ。

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