婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
秘密の契約


 婚約者である桜宮新との食事会はこれで何度目になるだろうか。

 互いの誕生日は毎年必ずお祝いをしていて、それ以外にも両家の親が事あるごとに理由をつけては両家族が集まるように仕向けていた。

 猛暑が過ぎ去り、すっかり秋めいてきた十月初旬。私たちが訪れたのは、京都老舗の味と料理人の巧みな技を体感できる料理店。

 私は飲めないけれど、繊細な味に合わせて揃えられた日本酒など、隅々までこだわり抜いているとお父さんが言っていた。

 桜宮家の方々とお会いする時は身なりにとても気を使う。

 私は顔の彫りが浅くてあっさりとした、決して美人とは言えない顔立ちなので、目元を重点的に、しっかりとしたメイクを施すよう心掛けている。

 ほんのり明るく染めた長い髪はハーフアップにして、鎖骨のライン上で煌めくネックレスは今年の誕生日に新さんにプレゼントされたもの。


 身にまとっている明るめのボルドー色ワンピースも先日贈られたものだ。ウエストに切り替えがあり、裾が自然に広がるシルエットだからスタイルがよく見える。

 身長は百六十三センチあるし背は高い方だけれど、高身長の新さんの隣に並ぶには小さい。釣り合いをとるために、苦手な高いヒールを頑張って履くようにしている。

 今日は和式の個室なので、窮屈な靴を脱げて多少は気が楽だ。
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