逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
自分なりに
順調だった交際が二カ月過ぎたころ。

蓮さんは本社で柾木専務として働き始めた。
その頃になると忙しそうで、出張も多くなかなか会える時間がない。
同じマンションとはいえ、基本的なことはハウスキーパーがやっているようで私がすることもなかった。時々、ご飯を食べて泊まっていって時間を共有する。
会えない中でも、連絡もよくくれたし、愛情も感じた。

忙しい中、私に気を使い過ぎて大変じゃないかとさえ思った。
だから、私は私のために時間を使おうと。
仕事を辞めて、家事手伝いになって自分なりに自分磨きをした。
九条家の娘として、時々パーティーだなんだと公の場に出ることが仕事のようなものだ。

あの器を買って以来よくギャラリーへ顔を出す。
オマケの箸置きのお礼に花を贈りに行って、南さんの花器へ生けさせてもらった。
それがきっかけで、彼の知り合いのカフェで週2、3程度カフェでお手伝いをしている。
40代夫婦二人のお店でランチ前後の時間少しだけ。
憧れていたカフェでの店員、九条家としてはアルバイトは認めて貰えないので、あくまでお手伝いだ。無償というのが悪いとカフェのご夫妻はランチと、引き立てのコーヒーを下さる。
私の事情も説明すると察してくれた。
その仕事はとても楽しいし、喜んでもらえて幸せだった。

カフェの仕事帰りに、久しぶりに今夜は蓮さんと外で待ち合わせだ。
15時には終わり、オシャレしていこうと、美容室へ行き、デパートへ立ち寄った。
新しいワンピースを見つけ、その場で着替えさせてもらった。
お気に入りを身に纏い、彼とデート予定。
女性として幸せだった。

デパートの帰り、運転手さんの運転するクルマに乗り信号待ちでふと外を見ると偶然にも蓮さんだった。仕事中だろうか。スーツを身に纏い、以前の桐生課長とは数段上のスーツ。いかにも出来るビジネスマン。でも、私の視線は彼よりも彼の隣でキリっと仕事をしている女性の姿だった。
彼よりも少し年上だろうか、仕事の出来そうな女性。
秘書なのかもしれない。秘書がついたとは聞いていたけど、女性だとは言っていなかったので気にしていなかったけど。
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