彩りのある場所で、恋を
俺、岡田直也(おかだなおや)。どこにでもいる普通の高校三年生。でも、ある秘密を抱えている。

突然だけど、俺には好きな人がいる。でもその人との恋はきっと叶うことがないんだ。

「それでは、今日は漢字のテストをしたいと思います」

五限目のチャイムが鳴り、教室に入ってきたのは男子生徒が「美人」といつも噂する女の先生。長く綺麗な黒髪に、細い体。白い清楚なシャツがよく似合っている。

先生の名前は、玉井栞(たまいしおり)。俺が高校二年生の時にこの学校に来た先生だ。清楚系美人で、普段の授業では眠る男子も玉井先生の授業の時は真面目になる。

俺は、玉井先生と出会った頃からずっと先生に恋をしている。でも、俺たちは先生と生徒。この想いは胸に秘めなければならない。

かくとだに えはやいぶきのさしも草 さしも知らじなもゆる思ひを

俺の頭の中に、切ない恋の和歌が浮かぶ。玉井先生と出会って少しでも話せたらと、和歌や古典を勉強してきた。
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