君は同期で幼馴染で××で
偶然か必然か
「相川さん、新商品の企画会議に出す案は進んでる?」

カールがかったダークブラウンの前髪の合間から、男性にしては少し大きめな目をのぞかせながら声をかけてきたのは、同期の恩田陸。

「一応……でも、納得がいかなくて……」

「見せて」

形だけは仕上がりつつある企画書を差し出した。



ここは私、相川真紀が勤める製菓メーカー〝ステラ〟の企画開発課。就職して3年目、26歳の晩春。冬に売り出す限定品の企画書を練っているけれど、思うようにいかない。
そして、さっき声をかけてきたのが、同期であり、今一緒に企画を考えている恩田陸だ。
一緒にと言っても、仕事のできる彼の立ち位置は、私とは若干違う。リーダー的なポジションで入っている。

「冬にチョコだからなあ……ありがちなだけに、特別感を出さないとって言ってたんだよねぇ……」

ぶつぶつ呟きながら、私の書いた企画書を見ていく。

「うん。コーヒー味、オレンジ味……内容は定番だけど、コーヒーは監修するバリスタを、いかにネームバリューのある人に依頼するかで差別化をはかるんだったね。思いつく人はいる?」

「何人かは考えてるけど……決めかねてるの」

「そうか……オレンジの方は……まだ練りきれてなかったよね……なるほど、柑橘類の種類と産地にこだわってかあ。いいと思う。どの柑橘類を採用するか、開発の方とも相談していこう」

「はい」

「うん。あとは、もう一種類を考えておきたいな。定番にはないような、特別感のあるもので。僕も、もう少し考えてみるよ」

まだまだ下っ端とはいえ、チャンスは生かしたい。恩田さんに言われたことをメモしながら、ここからどう進めていくかを考える。


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