君がいれば、楽園

十二月二十四日 午前七時の衝撃

 ふと肌寒さを感じて目が覚めたわたしは、枕元に置いたスマホを手にして愕然とした。

「え……七時? ど、どういうこと……?」

 アラームが鳴った記憶がない。

「まだ七時だろ……」

 羽根布団を奪っている彼。欠伸まじりに呟くだけで起きる気配は皆無。
 爽やかスマイルもなければ、豪華な朝食もない。

 なぜ、別れ話をしたはずの冬麻――元カレと一緒のベッドで仲良く眠っていたのか。
 
 昨夜、彼は気まずい別れ話のあと、いつものように淡々とお皿を洗ってくれた。

 そのまま帰るかと思ったけれど、「もう終電ないから泊まらせて」と言われ、追い出すわけにもいかず頷いた。

 わたしがシャワーを浴びている間に、彼は先に寝てしまっていた。

 ――さすがに一緒のベッドで眠るわけにもいかないと、ソファーで眠ったはずなのに……?

 頭の中に大量の疑問符が湧いた。

 しかし、平然と寝ている彼を追及している余裕はない。
 顔を洗って着替え、最低限の化粧をして、アパートを飛び出した。

 奇跡的にいつもの時間。

 ところが、バスに乗り遅れた。

 冬は、五分遅れでやって来るのが常態なのに、今朝に限って定刻どおりだったらしい。

 なんとか就業開始時刻三分前にオフィスに到着し、汗で崩れた化粧を直す暇もなくデスクに座った途端、課長から悲しいお知らせがもたらされた。

「あー、夏加。実は、先月採用した派遣スタッフなんだが……辞めたいとさっき連絡があった」
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