彼と彼女の甘い秘めごと
▼苦い、苦い、彼女
◇
ガチャッ
「おかえり紗和」
「ただいま伊織」
――…ちゅっ。
確かめ合うように啄まれたキスに、愛しさがこみ上げる。
部活を終えて買い物をして、帰ってきたら伊織が居る。
この日々を壊したくないと、守り抜きたいと、今日はいつも以上に思った日だった。
社会科準備室をあとにしてから、すぐひなに謝りに行った。
「紗和ちゃん私もごめんね!」と眉を下げて何度も謝ってくれたひな。悪いのはわたしだというのに、心優しい彼女にありがたさばかりが募っていった。
その後戻ってきた高見くんとは、それからあいさつ程度の会話しかしなかった。