猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
7.お迎えです



車窓の景色は見慣れたビル群。もう少し走ればのどかな地域に入り、やがて海も見えるだろう。東海道新幹線の車内は空いていたものの、富士山が見える山側の座席はビジネス客で埋まっていた。海側は日差しが強いので好まれないのだ。

私は三人掛けの一番窓側に座り、ぼんやりと景色を眺めていた。新幹線のスピードで景色は次から次へと変わっていく。

三実さんに抱かれた。女として妻として、抱かれた。結婚二ヶ月、遅すぎる初夜だった。
後悔するのはただひとつ、私たちは愛を伝えずに抱き合ってしまった。

怒りと悲しみで三実さんは強引な行動に出た。彼を追い詰めたのは私。私が気持ちを伝えなかったから、彼を不安にさせてしまった。
なにしろ、私はあの瞬間まで自分がどれほど夫である人に惹かれているか気づきもしなかったのだ。

結果三実さんは私を無理やり抱こうとし、私はそれを受け入れてしまった。
本当は話し合うべきだった。彼を拒んだ上で、私の心からの気持ちを聞いてもらうべきだった。勢いと欲に任せて抱き合ってしまったのは失敗だ。順序がめちゃくちゃだ。
あのまま彼の横で朝を迎えるのは耐えがたかった。初めての行為に羞恥心が湧いたのも確かだったけれど、まるで機嫌を取るみたいに身体を開いてしまった自分が嫌だった。
受け入れてくれと言われ、受け入れたくなってしまった。

私は、本当に心が弱い。自分がない。
大事な大事な局面で折れてしまう。

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