猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
3.お仕事します



三実さんのもとへ嫁ぎ、10日が経った。私は週3日三実さんの会社で仕事をしている。

「幾子ちゃーん、こっちこっち」
「はい!今行きます!」

呼ばれて走っていけば、そこには麻生さんがポスターを貼っている。警察から届けられた還付金詐欺の啓発ポスターだ。他にも市役所のポスターや、取引先のポスターはあり、総務前の掲示板に貼ることになっていて、この仕事は総務ではなく麻生さんがやっている。

「そっちの端を押さえておいて」
「はい」
「すまないねえ。家内がいつも手伝ってくれるんだけど」
「由美子さん、ぎっくり腰なんですから駄目ですよ」

由美子さんは麻生さんの奥さんのお名前だ。
私がこの会社で任されている仕事は備品管理。嘱託で働く麻生さんご夫妻と一緒に、社内で使うものや使い終わった資料の管理、そしてこういった雑用をしている。
勤務は週三日。もう少し働けると三実さんに言ったけれど『そんなに仕事がたくさんあるわけじゃない。それに、嫁いできたばかりの幾子をこき使っていると父に言われるのもなあ』なんていなされてしまった。
やっぱりこの仕事自体、私の暇つぶし用に用意してもらった感がいなめない。

しかし、久しぶりに外で働くということが楽しい。麻生さんご夫妻も親切で一緒にいるとほっとする。
なお、『若奥様』という呼び方は目立つので、名前で呼んでもらっている。表向き、社長夫人であることは隠した状態だ。一応お給金も出るらしい。

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