その花屋さんを出てから、私はすぐに後ろを振り返った。

もうここで、彼とは別れよう。

いつまでもぐずぐずしていても、申し訳ない。

「じゃあ、告白、がんばってね」

 彼はうなずく。

「また今度、結果を教えてね」

 彼の腕に抱えられた花束は、どんな女の子が受け取るんだろう。

「いいなぁ、私もこうやって、告白されたかったな」

「誰にですか?」

「好きな人から」

「いるんですか?」

「もうふられちゃったけど」

「えっ、いつです?」

 後輩くんは、驚いた声をあげる。

「今、この瞬間」

 せめて、にっこり笑って言おうと心に決めていた。

「今、目の前にいるキミに」

 彼の動きが、ピタリと止まった。

「ウソ! 冗談よ。ごめんね、大事な時に変なこと言って。じゃあ、がんばって!」

 さぁ帰ろう。

本当はずっと我慢していた。

こぼれ落ちそうな涙が、彼に見つかる前に。

「ちょっと待って下さい!」

 その声に、私は振り返る。

「好きです。僕とつき合ってください」

 目の前に、大きなバラの花束が差し出された。

『完』

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