お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。《追憶編》
お嬢様と執事
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「ダン。社交会でのマナーは?」

「はい!騒がない、走らない、暴れない!」

「うん。気をつけてね。」


港での一件から数日後。

メルはウォーレン、ダンレッドと共に都市部の城で開かれる社交パーティーに参加していた。

国内外から名のある財閥が集まる会は年に二度ほど開催され、中には王族の顔ぶれも見える。ダンレッドは、ドレスコードのせいでカッチリとしたスーツを着る羽目になり、そわそわと落ち着かない様子だ。


「メル。」


その時、ふと、受付を終えたウォーレンが声をかけた。彼は嬉しそうに目を細めている。


「ゲストの名簿はだいたいチェックが入っていたよ。どうやら、娘はもう会場に入っているらしい。」

「なるほど…。受付をしている間にすれ違ってしまったのかもしれませんね。」


『今夜、隣国に留学に出ていた娘が帰ってくる。』

そう、ウォーレンから告げられたのは今朝の話だった。

もともと社交会に参加する予定だったこともあり、会場の受付で合流する予定を立てていたが、彼女はすでにホールの中にいるらしい。

ウォーレンは、娘との再会を待ちきれないように少し早口で告げた。


「私は今夜の主催者に挨拶をしてくるから、用が済んだら、後で娘に連絡をとって貰えるか?」

「かしこまりました。」

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