雨のリフレイン
4.偽夫婦の肖像

写真だけで

八月。

八坂家のカレンダーに、大きな赤い丸が付いている日がある。
母は、その日を指折り数えて、とても楽しみにしていた。


「洸平くん。
いよいよ明日よ。お休み、大丈夫よね?
急患も、他の先生に回すようにしてるわよね?」

母は、わざわざ水上に電話して念押ししている。

『大丈夫ですよ。そんなに心配しないで下さい、
体に良くないから』
「もう、柊子と同じ事言わないで。
じゃあ、楽しみにしてるから」

電話を切った母は、鼻歌など歌いながらご機嫌だ。


「お母さん、水上先生は忙しいのよ?そんな、念を押さなくても」


柊子は、読んでいる参考書から顔を上げ、呆れたようにつぶやいた。


「楽しみなの。
柊子のドレス姿に洸平くんも驚くわよー。
洸平くんのタキシードも、最高にカッコいいんだから。
二人が並んでいる姿を思い浮かべるだけで…
あー明日が待ちきれない!」


明日、母念願の写真を撮る。
水上と柊子のウェディング写真だ。
水上と柊子は互いの時間を合わせることが出来なくて、それぞれ別々の日程で衣装を決めた。
どちらとも一緒に行って、衣装はほぼ母が決めた。
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