雨のリフレイン

さよならも言えず

外に出ると、ポツポツと雨が降り始めていた。雨粒が頬に当たる。柊子は、バックから折りたたみ傘を取り出した。
念のため、持ってきてよかった。

レストランからマンションまで歩いて30分。来るときには洸平とタクシーに乗ってきた道のりをとぼとぼと歩く。履きなれないヒールが痛い。かといって、タクシーに乗るのはもったいなくて。

雨の中、痛む足を引きずりながらただ黙々と歩いた。


まずは、謝りたい。そしてもう一度話をしたい。柊子の抱いている不安を聞いてほしい。きっと洸平なら、わかってくれる。いつでも柊子の異変に一番に気づいてくれる人だから。



マンションの外から窓の明かりを確かめる。
洸平の部屋も、自分の部屋も真っ暗だ。
洸平は、帰ってきていないのかもしれない。


とりあえず謝ろうと思ってここまで歩いてきたけれど、空振りのようだ。
柊子は、疲れて重い体を引きずりながら自分の部屋に入った。

冷静になって、きちんと話をしたかったのに。
柊子の不安と、洸平の不信感。顔を突き合わせて話し合えば解決できるはず。
明日でも、明後日でも。洸平が帰ってくるのを待とう。彼が帰る家はここのはずだから。
次こそ、もっと上手に話をする。











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