雨のリフレイン

押し殺した想い




「桜木さん、いよいよ今日が退院ですね。
お疲れ様でした」

検査入院の最終日。
柊子は、いつものように桜木の特別室を訪れた。


「…っ!」
「桜木さん?
桜木さん、どうしました、桜木さん?」

桜木は、ベッドの上で苦しんでいた。
柊子は、すぐにナースコールに飛びつく。

「桜木さん、すぐに翔太先生来てくれますから」

何も出来ない自分がもどかしい。
柊子は、桜木の手を握って懸命に呼びかけた。


そこへ、ドアが開いて白衣を着た医師と山田師長がやってきた。
二人は一直線に桜木のベッドに駆け寄り、診察を始める。

「桜木さん、わかりますか?」

医師は翔太ではない。


その声、その後ろ姿。
柊子は、ハッとなる。


幾度も好きだと告げては、振り向いてくれないあの人に重なる。


「すぐにCTの準備」


振り返って柊子を見たその顔は。


ここには居ないはずの、水上洸平、その人だった。


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