交換日記

彼に初めて会ったのは、サクラが満開となる4月の初めだった。

目にもやわらかなピンクの花びら…。

学校の校門へと続くサクラ並木。

小さな花が集まって咲いているサクラ。

元気な風に吹かれて揺れていた。

私達、中学生。

この4月から中学生活がスタートしたのだった。


朝、身支度をすませ、外に出ると、友達のミヨちゃんが待っている。

「おはよう。」
という彼女は少しほっそりとした背丈に、髪は短めのボブスタイルだ。

「おはよう、ミヨちゃん。」
昔からの友達で、家も隣同士だ。

ミヨちゃんと呼ばれている彼女は私にとって大切な友人の一人だ。

「なんか今日1日忙しくなりそうね。中学校まで遠いし、勉強も大変そうだし…。給食はないしな…。」
と楽しそうに彼女はケラケラと笑った。

楽しそうにしてる彼女はエネルギッシュだ。

「ねぇ、トモちゃん」
彼女は私に声をかける。

「聞いて、聞いて…。私、へんな夢見ちゃったわ。」
ミヨちゃんの大変そうな声。

「へえー、どんな夢?!」

「あまり覚えてないんだけど、何かに追いかけられて、怖かったわ…。
挙げ句の果てに足がつって起きちゃった!!」
彼女は肩をすくめた。

あ〜あ、というミヨちゃんの声。

「本当なの? かわいそうに、だいじょうぶ? 」

私は彼女の肩を抱きしめ、ポンと体を傾けた。

少し顔を覗き込んで、

「大変だったね。」

と言うと、彼女ははしゃぐように、最悪だ!!

と私の体をパンパン叩く。

「だいじょうぶ、もう平気よ。」

「そっか…。」

「ありがとう…。いつも心配してくれて…。」

「えっ☆☆」

言葉にならない声。

ミヨちゃんを見るといたって冷静。

「そういえばトモ…。大きな声で言えないんだけど、私、アレになっちゃった。」

「アレって?!」
とさっきよりも大きな声だ。

「大きな声出しちゃだめ…。」
人差し指を自分の口に当てた。

何かを私に報告してくれるようだ。

彼女の長いまつ毛を見ながら待っているとそおっと教えてくれた。

「あのね…。女の子が月になるアレよ。」

…あ…。生理の事か…。

ミヨちゃん、もうきちゃったんだ…。

私はまだなのに…。

ミヨちゃんは早いなぁ…。

それとも私が遅いのか…。

想定外の事だった。

私の心配をよそに、

「そう、私達はまさに青春真っ只中だわ…。」

と手に持っているタオルをブンブン振り回しながら、大きく1歩、2歩、前進する。

彼女は息を大きく吸い込む。

私も息を吸い込んだ。

青春かぁ〜。

まだ実感わかないなぁ…。

笑ったり、泣いたり、怒ったりと私達はいそがしい。

嬉しかったり、悲しかったり、と目まぐるしい。

空を自由に駆けずり回っている小鳥を見て思わず息を止めた。

私は大きくまばたきをした。

周りの木々が反応してるように見えた。

ずっーと続く坂道。

アスファルトの坂道が続いていた。
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