同期のあいつ

SIDE 鷹文

鈴木を見送ってから、部長に電話をした。

夕方まで一緒に会議に出ていた俺は、今日の接待が危なそうな事も話していた。
それに、今日接待で使った店はうちの会社のなじみの店。
営業はもちろん、社長も専務もよく使う店だ。
そこで騒ぎを起こせば、イヤでも上層部の耳に入る。
背びれ尾びれが着く前に報告しておいた方がいいだろう。

「高田です。夜分にすみません」
『どうした?』
こんな時間に突然かかった電話に、部長の声が緊張している。

「今日の鈴木の接待ですが」
『何かあったのか?』
「ええ、大事にはいたりませんでしたが・・・」

『それは気の毒な事をしたな』
「1人で行くなって言うのを聞かなかったのはあいつの責任でもありますから。ただ、あの店ってうちの上層部とも親しいんですよね」
『ああ。あそこの女将は専務とも懇意だからな、もう耳に届いているかもしれないな』
「ええ」
『俺の方からも報告を上げておくから』
「お願いします」

社内でも、豪腕で厳しくて嫌われる事の多い営業部長。でも、俺は信頼している。
決して間違った事は言わないし、部下のフォローだって忘れない。
ただ、言葉が強すぎて嫌われ者に回る事が多いだけ。
まあそこは、俺が緩衝材になればいいと思っている。

先日の小熊の事だってそうだ。鈴木は小熊をかばうし、周りのみんなも「部長もあんな言い方しなくたって」と言うが、悪いのは小熊だ。
上司にたてつくとか、仕事を放りだして逃出すとか、社会人として許せない。
そして、そんな小熊をきちんと叱る事ができなかった鈴木が問題なんだ。

『相手の部長には俺が話をするから、あそこの担当から鈴木を外せ』
「はい」
すみませんでしたと頭を下げ、俺は電話を切った。
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