同期のあいつ
わがままお嬢様

お見合い

せっかくの週末。
土曜日の朝から、私はホテルのラウンジにいた。

「一華少しはにこやかにしなさい」
さっきから母さんは、小言ばかり言っている。

「楽しくもないのに笑えるわけがないじゃない」

「営業をやっている人間の言葉とも思えない」
黙ってたばこを吹かしていた父さんも、口を挟んでくる。

だから、私はここに来たくなかったの。
でも、母さんには「朝帰りをばらすわよ」と言われ、兄さんには「セクハラ接待を公にするぞ。そうなれば高田課長の責任問題になる。それでもいいのか」と脅され、仕方なくやって来た。

「お待たせしました」
いかにも高そうな着物を着たおばさま。その後ろに、30歳前後に見える男性とその両親。

「初めまして、白川潤です」
「鈴木一華です」
とりあえず、名乗ってみた。

一見さわやかで誠実そうな男性。
でもね、こんな人に限ってとんでもない性悪って事が多いの。
何人も女がいたり、ギャンブルにはまっていたり、闇の仕事に手を

「・・・あの、一華さん?」

マズイ、妄想していた。

「すみません、何でしたっけ?」
「一華さんのご趣味は?」

ああ、お見合いの定番。
でも、私はお見合いを壊しに来たわけで、

「趣味って、男性の好みって事ですか?」
「ええ?」
おばさまの顔が青くなった。

「い、一華」
母さんが小声で注意する。

「だって・・・」
私はほっぺたをプーッと膨らませて見せた。
28の女がやってもかわいくない事を承知の上で追い打ちを掛けてみる。
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