懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
傷ついたふたつの心
ゆっくりと目を開けた里帆の目に見覚えのない部屋が映る。白い天井に白い壁、同じく白いカーテンが揺らめいている。
懐かしい夢を見ていた。亮介に誕生日を祝ってもらった夜の、楽しい記憶。
いっそ目覚めなければ、ずっと幸せな時間を過ごしていられたのにと思ってやまない。
目線を動かした先に亮介を見つけ、瞬間的に過去に引き戻される。
「亮介さん……」
半年前のように、つい愛しい呼び方で声をかけてしまった。
その直後、あの頃とは違うと気づいて顔が強張る。
「目、覚めたか」
「私……?」
どうしてこんなところにいるのだろう。
どうして亮介がそばに。
「俺と話した後、倒れたんだ。覚えてない?」
「あ……」
そうだった。急に目眩に襲われて、そのまま意識を手離したらしい。