元カレと再恋愛ってありですか?
冷たいミネストローネ
「木ノ内」
「お疲れ様です」
紗那に声をかけたのは紗那の会社の代表取締役社長の藤田誠。
先代に続いて建築会社を継いだ2代目社長は社員からの評判がかなり悪い。
ただ、先代が早くに体調を崩したことを理由に大学を卒業して間もないまま代表になった誠は基礎的な建築に関する知識も、経営に関する知識も持ってはいなかった。
「金田重工の社長宅。進んでるか?」
「はい。来月の頭から建設が始まります。」
「そうか。ありがたく思えよ?これでまた木ノ内の名前が売れることになる」
「・・・ありがとうございます」
「俺がいなければここまで木ノ内の人気は出てないからな」
どんなに紗那ががんばっても、紗那自身の実力を認めてくれる相手ではないと思っていても、いつも自分が仕事を与えているからクライアントからの評価をもらっているという誠の考えに、紗那は傷ついていた。

何度か会社から独立することも考えた。
でももしも独立することになれば同じチームで紗那を支えてくれている仲間と離れることになる。
それに一人ですべてをこなす勇気はなかった。
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