リペイントオレンジ🍊

こんな偶然は求めていませんが


***


「「「カンパーイ!」」」


人で溢れる店内。
奥の個室からはガヤガヤと楽しそうな笑い声が響いている。


そして、目の前にはキンキンに冷えたビール。


今日は、仕事を早めに切り上げて木村先生と榊先生が私の”初大仕事お疲れさま会”を開いてくれることになり、近くの居酒屋までやって来た。



「尾崎先生お疲れさま、どうだった?初めての大仕事は」


榊先生を挟んだ向こう側から、木村先生がひょこっとと顔を覗かせる。


「ん〜、なんと言うか。やっと不安から解放されて、今は達成感で胸がいっぱいです」


初めて来る居酒屋で、こうして先生たちとカウンターに座りながらお酒を飲んでるなんて……すごく大人になってしまった気分だ。


はぁ……。
なんにせよ、今日一日が無事に終わって良かった。



「にしても、あの菅野相手に尾崎ちゃんはよく頑張ったと思うよ」

「ほんと!顔は良いけど、性格がな〜。一夜限りならもちろんアリだけど」

「……こら、木村先生」

「やだ!今の冗談だからね?私は榊先生の方がタイプだしな〜」

「はいはい、どーも」

「極めて華麗に流すじゃん……!」


榊先生と木村先生の軽いコントを横目に、わたしは一人、今日の菅野さんを思い出していた。


……仕事してる時の菅野さんは、文句のつけようがないくらいにかっこよくて。まさに洗練されていた。
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