さよならを教えて 〜Comment te dire adieu〜
⚖️ Chapter 3

あんな醜態を茂樹に(さら)した翌朝、

——どんな顔をして対面すべきか……

目覚める寸前、脳裏を(よぎ)ったが杞憂だった。

明け方、わたしがまだ眠っている間に、彼は富多の家に戻って行ったらしい。
(わたしがひどい状態にしてしまった彼のスウェットは、洗濯機の中に放り込んであったので、しっかりとキレイに洗わせてもらいました)


このGWに、茂樹が中学生の頃から「お仕え」している将吾氏の結婚式があるため、日曜日といえども「富多家の執事」の方の仕事で超多忙なのだ。
(「主君」の結婚準備には東奔西走してるみたいだけど、相変わらず自分自身の結婚願望は一ヨクトたりともないようだ)

世界有数の自動車メーカー・TOMITAの持株会社であるTOMITAホールディングスの副社長のお相手は、日本を代表するメガバンク・あさひJPN銀行を擁するあさひJPNフィナンシャルグループの社長令嬢だそうだ。

経済誌などからは、この政財界のつながりを重視したビッグカップル誕生について「しあわせな業務提携」と言われている。

いわゆる「政略結婚」というものだ。

——超名家に生まれるのも大変だな……


そして、わたしは来るべき月曜日のTOMITAホールディングスへのプレゼンに備えて、日曜日はそのシュミレーションをしつつも、しっかりと休養も取った。

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