強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
幼馴染から夫婦へ



「わざわざすまなかったね、明ちゃん」

「いえ。真夜からおじさんが入院したって聞いて心配で。でも、元気そうでよかった」

真夜にはお見舞いは必要ないと言われたけれどやっぱり心配で、その日の仕事終わり、おじさんが入院をしている病院へと足を運んだ。

職場から電車で一駅ということもあり、面会時間にはなんとか間に合うことができた。

おじさんの様子を見るまでは心配だったけれど、思っていたよりも顔色が良くて安心する。

「すみません、急いで来たからお見舞いの品を何も持ってこなくて」

「いや、いいんだよ。こうして顔を見に来てくれただけでも嬉しいから。真夜なんか連絡のひとつ寄越しやしないんだから冷たいやつだ。まったくひどい息子だよ」

辛辣な言葉のわりにおじさんの表情は柔らかい。

子供の頃から思っていたけれど、おじさんは巨大なホテルグループを率いる社長のわりにのんびりとしていて、いつもにこにこと笑っている朗らかな人だ。

そんな穏和で心優しいおじさんだからこそ、私の実家の和食料理屋の危機を聞き付けて、すぐに救いの手を差し伸べてくれたのかもしれない。

シヅキホテルグループの援助がなかったら、今頃、保しなはきっと潰れていた。

< 10 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop