強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
独り占め




『俺、しばらくバリに行くことになったから』


――十七歳の夏休み。

翌日から学校が始まるという八月後半のとても暑い夏の日の午後だった。

クーラーを効かせた自分の部屋で、まったく手を付けていなかった夏休みの宿題の残りを、もう間に合わないと半べそかきながら必死に片付けていると、仕事が休みの真夜が久しぶりにうちへ遊びに来た。

なんていいタイミング。お願いします宿題を手伝ってください真夜様、と丁寧に頼んだのに、嫌だとあっさり断られしまった。

真夜の薄情者、意地悪、大嫌い、とぶつぶつ呟きながら宿題を続けていると、私のベッドでくつろぎながらスマホをいじっていた真夜が、突然さらっと先程の衝撃的な事実を告げるから驚いた。

びっくりしてシャーペンの芯がポキッと折れてしまうほど。


『親父にさ、バリにあるうちの会社の系列ホテルの支配人やれって言われたから、ちょっと行ってくるわ』


なにそれ。

ちょっと近所のコンビニへ行ってくるわ、みたいな軽い言い方。

バリって外国だよね。

フランスにあるんだっけ?

それはパリか。

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