美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~

見つけた

゛あなたのその髪が世界を輝かせる゛

小学校5年生の時、テレビのCMを見た。

女性の背中にかかる黒髪が風に揺れる。

光に照らされて艶々と煌めく。

その瞬間、彼女が世界の中心にいるように見えた・・・。



* * * *



あれから16年。

三神瑠花(みかみ るか)27歳は、今日も白衣を着て目の前に並べられた数々の液体と向き合う。

シャンプー、リンス、コンディショナー、etc.・・・。

゛女性の髪を輝かせる仕事に就きたい゛

その夢を叶え、瑠花は今日もヘアケア商品の開発に勤しんでいた。

「瑠花ちゃん、昨日の試作品、使い心地はどうだった?」

「おはようございます。橋沼課長。結論から言いますと、少し髪がごわついて指通りが気になりました。臭いも少しきついというか・・・」

「どれ・・・」

そう言って瑠花の髪に触れるのは、橋沼雅樹32歳、商品開発部・研究開発課の課長だ。

「確かに少しごわついてるな。軋みも気になるか・・・」

雅樹が瑠花の髪に触れた指が擦れる音がした。

「・・・ここはセクハラが日常化しているのか?」

カチャリとドアが開く音がした後、瑠花と雅樹はその音の方向に顔を向けた。

「穂積、随分早いじゃないか」

雅樹は、瑠花の髪から手を離すと、入り口から入ってきた男性に近づいていった。

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