美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~

シーク&リーク

無理やり朔也に約束をされ、溜め息をついていた瑠花だったが、

「三神主任、また会ったわね。期日まで2日を残して商品が完成するなんてさすが」

と、緊急幹部会議が終わりランチタイムを挟んでゆっくりとした時間が流れ始めた午後、今後の打ち合わせに来ていたという心晴に声をかけられていた。

普段は限られた研究開発課員しかこの部屋には入れないのだが、瑠花個人の研究室の場合、新商品が完成してお披露目をした後だったので出入りに制限をかけていなかった。

「穂積部長のお知り合いから色々と優遇して頂きまして・・・」

黙っていた方が良いのかもとは思ったが、下手に隠そうとして拗れるのも厄介だ。

緊急幹部会議には、狭間部長も但馬課長も参加していたのだから、心晴がその事を聞いていてもおかしくはないだろう。

「穂積くんの紹介?相変わらず彼、面倒見がいいのね」

感心したように頷く心晴は、心なしか嬉しそうだ。

゛あの冷徹俺様眼鏡御曹司のことを面倒見がいい、と思えるなんてさすが婚約者は寛容でいらっしゃる゛

と、瑠花は心の中で悪態をつきそうになったが、悪いのは朔也であって、心晴ではない。

八つ当たりは良くないと、心晴は考えを改めた。

「今回の新商品、心晴さんが宣伝広報担当だとお聞きしました。よろしくお願いします」

「フフ、まるで子供を初めて幼稚園に預けるお母さんのようね。大丈夫、任せといて。営業部門と一丸となって絶対に流行らせてみせるから」

心晴にとっては、社運がかかっているというだけではなく朔也(恋人)がデザインを担当する貴重な商品だ。

張り切るのも無理はない、と瑠花は微笑ましく思った。

ここでもまた、綺麗で優しい心晴は、やはり瑠花の憧れの存在であり決して傷つけてはならない人認定された。

瑠花は、土曜日も朔也と仕事をすることになったことを心晴に伝えようかと思ったが、既に朔也から話を聞いているかもしれないと思い、自分から切り出すのはやめることにした。

「ねえ、これが試作品?すごくいい香りね」

置いてあったボトルを手に取り、クンクンと匂いを嗅ぐ心晴に

「サンプルを差し上げたいのですが、まだ持ち出し禁なんです。申し訳ありません」

と瑠花は申し訳なさそうに謝った。

「わかってるわ。それに使い心地は三神主任の髪の仕上がりを見れば一目瞭然だもの。それを見ることができただけで満足よ」

心晴の穏やかな表情にホッとした瑠花は

「お茶とコーヒー、どちらがよろしいですか?今準備してきますね」

と、コーヒーブレイクを申し出た。

「ありがとう。コーヒーでいいわ」

微笑んだ心晴は、給湯室に向かう瑠花に感謝の意を述べ、ゆっくりと近くの椅子に腰を下ろした。
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