蛍火に揺れる
あの日見た蛍
気付けばもう四月に入っていた。


(あ、ハルさん発見)

いつも通りに昼休みの食堂。私が席を探していると、ちょうどハルさんの隣が空いているのが目に入った。
ふとハルさんの前に目を向けると…

(おぉ!可愛い子だ!)


さらさらのストレートの黒髪が似合う可愛らしい女の子。
小柄(…って私よりも大きいのだけれど)でおっとりとした雰囲気の子だ。
スーツの着こなしからして、恐らく新入社員っぽい。

せっかくなのでお近づきになりたい私は、ハルさんに突進をしかけてみた。

「ハルさんーいい?」

「お、噂をすれば……」

「噂って何?」

「そうそう、これが江浪君の彼女だから」

「何なのそれ?!」

一体何の話をしていたんだ。
私はお盆を置くと、ドスっと音を立てるようにしてハルさんの隣に座った。

「え…だってそうでしょう?」

「いや…まぁ……そうですけど………」


視線を一瞬彼女にやると、たじろぐ私を見てクスクスと笑っている。
ちくしょう、可愛いなこの子。

「そうそう、新人の菅原さん。私が教えているの」

そう紹介された彼女は、ペコリと頭を下げる。
先日から配属になった新卒の子らしい。
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