3LDK、バス・トイレ・〇〇付き
第5話

瑕疵物件

「我々も、ここに居させて頂きたいのですが…。」
と、悌二郎は言った。

「こ、ここに!?」
まなみは、目を丸くした。

「……。」
なつきは黙って幽霊達を見ていた。

「ど、どうする…?」
まなみはなつきを見た。

「う、うーん…。」
なつきも、まなみを見た。

「ま、先ずは…。」
まなみは携帯を取り出し、
「不動産屋に言ってみるね…。」
と言った。

「そ、そうね…。」
なつきは頷いた。


まなみは、不動産屋に電話をした。

『お電話ありがとうございます。高日不動産です。』
と、高田が電話に出た。

「もしもし、《Tigre blanco》に入居した松平の友人ですけど。」
と、まなみは言った。

『どうも、この度はありがとうございます。』
と、高田は答えた。

「この部屋…。」
まなみは少し間を置いて、
「幽霊がいるんですけど…。」
と言った。

『あ、出ました?』
高田はたいして驚いていない様子で、
『じゃ、出るんだね…。』
と言った。

「え、知ってるんですか?」
とまなみは訊いた。

『えぇ、前に住んでた住人さんからは聞いてます。』
高田は、当たり前のように答えた。

「え?」
まなみは驚いて、
「それって告知事項じゃないんですか?」
と訊いた。

『いいえ、あの部屋で人は亡くなったりしてないので、心理的瑕疵物件(しんりてきかしぶっけん)ではないんですよ。』
と、高田は答えた。

━━心理的瑕疵物件とは、その建物内で事件・事故・病死・自殺などで、人が亡くなっている場合など、他人があまり良い気持ちのしない状況の物件の事である。
ちなみに、雨漏りするなどの構造上の欠陥は、物理的瑕疵物件(ぶつりてきかしぶっけん)という。

「で、でも…。」
とまなみは納得出来ない様子。

『そもそも、幽霊は見える人と見えない人がいますし…。』
と、高田は言った。

「そ、それは…。」
とまなみは、言葉を失った。

そして、まなみは幾つか言葉を交わしたあと、電話を切った。

「なつき、どうしよう?」
と、まなみはなつきを見た。

「ちょっと、怖いけど…。」
なつきは幽霊達を見て、
「悪い霊ではなさそうだし…。」
と言った。

「ここに住むの?」
と、まなみが訊いた。

「うん。」
なつきは頷いた。

「じゃ、幽霊付き物件に住むの?」
と、まなみは訊いた。

「うん。」
なつきはまなみを見て、
「このまま住むわ。」
と言った。

「この子達…。」
なつきは少し間を置いて、
「すごい悔しい思いをして来たと思うの…。」
と呟くように言った。

━━彼ら白虎隊の悲話は、現代まで語り継がれている。

「確かに…。」
まなみは納得したように、
「追い出したら可哀想だね。」
と頷いた。

「かたじけない。」
と、悌二郎は頭を下げた。

他の幽霊達も頭を下げた。

「ただし…」
まなみは少し間を置いて、
「私達は、年頃の若い女性なんだから…。」
と、幽霊達を見た。

「……?」
幽霊達は、まなみを見た。

「変な事したら、殺すからね。」
と、念を押した。

━━もう死んでるよ(苦笑)

「もう、亡くなってる子達よ。」
なつきは、まなみを見た。

━━ほら、言われた(苦笑)

「あ、そっか…。」
と、まなみは舌を出した。

それを見た虎之助が、
「え、エモい…。」
と言った。

「!?」
「!?」

なつきとまなみは、顔を見合わせた。

そして、二人は爆笑してしまった。

「ちょっと、あんた、どこでそんな言葉覚えたのよ!」
と、まなみが突っ込んだ。

「前に、住んでいた方達です。」
と、虎之助は答えた。

「面白い子達だね。」
と、まなみは言った。

「うん。」
なつきは頷いた。


そして、二人は幽霊達と共同生活をする事になったのだ…。

二人の美女と、沢山の幽霊…。
奇妙な共同生活の始まりである…。
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