瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
「ひとまず、それぞれ湯浴みでもしてきたらどうだ?」

 どっちみち布一枚では追いつかない。クラウスはルディガーの提案に素直に従い、さっさと行動に移そうとする。そんな彼の態度に、緊張の糸が切れたルディガーは大袈裟に肩をすくめた。

「ま、詳しくは聞かないが、お前が無事に戻って来たこと、アードラーとしても親友としても嬉しく思うよ」

 俺たちがアードラーでよかったな、と付け足すルディガーにクラウスは余裕めいて告げる。

「俺の見る目は確かだったということだ」

「お前の手柄扱いか」

 すかさず切り返したルディガーだが、ややあってクラウスと互いに目を見合わせ笑みをこぼす。

 アードラーを任命するのはアルノー夜警団の総長である国王の役目とはいえ、あまりにも言い切ってしまうのがクラウスらしい。

 もちろん半分冗談で、彼なりに幼馴染みふたりには感謝している。それもまたふたりは伝わっている。

 クラウスはいまだに戸惑っているレーネの肩を抱いて、部屋を出ようとする。

「クラウス」

 そのとき壁に背を預け今まで口を挟まず静観していたスヴェンが声をかけ、クラウスは一瞬足を止めた。

「取り戻せたのか?」

 端的な問いかけにクラウスは目を見張った。そしてしばし返答を迷った末、目を閉じる。

「だと、いいな」

 彼にしてはなんとも歯切れ悪いが、声色は穏やかだ。なら、いい。スヴェンはわずかに口角を上げる。いつのまにか外の雨はやんでいた。
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