訳あり冷徹社長はただの優男でした
すずと大きなスーツケースを私に押し付けた姉は、あっという間にその場から消え去ってしまった。
追いかけようにもすずを置いていけないし、どうにもできなくて私は頭を抱える。

とりあえず、すずを家に入れてからスーツケースの中身を確認すると、すずの服やおむつ、おもちゃや絵本がぎっしりと詰まっていた。
そして傍らには銀行のカードと通帳。
恐る恐る中を開いて確認してみると、想像以上に大きな金額が入っていた。

これで私にすずを育てろと?

あまりの用意周到さに開いた口が塞がらない。
すずはスーツケースから絵本を取り出すと、
無邪気な笑顔で言った。

「ねえね。よんで。」

「うん、ちょっと待って。」

「よんでー。」

まとわりつくすずを軽くいなしながら、私は姉に電話をかけた。
けれどその電話は繋がることはなかった。

【お客様のおかけになった番号は現在使われておりません】

何度試してみても同じだった。
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