私立秀麗華美学園
6章:正しくは秀麗華美
かくして、咲と雄吾は元の通り、いや、前よりもあからさまにべたべたするようになった。

咲は学園内の廊下でも、雄吾の腕にしがみつくみたいにくっつて歩いたりするし、見ててこっちが恥ずかしいようなことを平気でしやがる。
そして雄吾の方も、そんな咲を受け入れ態勢でいるのだ。

まあ何にせよ、すっかり仲直り。
あのドロドロした息苦しい時期と比べれば、文句は言っていられない。


平穏な日々は続き、俺たちは学園祭の準備にいそしんだ。
クラスの、親が食品関係の会社を持つ生徒8人を中心に、粘着性の高いキャラメルは無事合成された。

ちなみに水は結局四万十産とアルプス産のブレンドということに決まったらしい。
アルプス産の水なんか、輸入途中で日本の空気に触れて変化したりしてんじゃねーのかな、と俺は余計な心配をする。


当日3日前には教室が飾られ始めた。
黒板の上の時計が金ぴかになったりしている。
ロッカーの上に無造作に置かれたあの彫刻なんて値段も知りたくない。

そして前日の今日、教室はもはや美術館と化していた。


「いよいよね! 模擬店やるの初めてだなあ」


模擬店と言って正しいのかどうかはよくわからないが。
副委員長のゆうかは、笠井以上に張り切って、今回の学園祭に取り組んでいた。


「うち、兄ちゃんも姉ちゃんも来るらしいんだよなあ……」

「そうなの? 久しぶりね。うちは誰も来ないと思うわ。だからやっぱり、夏休みぐらいには一回帰らなくちゃね」

「あー、そんな気の重い話もあったな……」

「重くない重くない」


ゆうかがけらけらと笑って、手に持った荷物でばしばしと俺の背中を叩いた。


「でもC組楽しみね」

「だよなあ。俺ら的には一番の目玉だな」


明日はついに、執事雄吾のお披露目だ。
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