私立秀麗華美学園
5章:浪花ガールは武士の姫
「なにか、ついているんじゃ……」


俺と雄吾がいるのは、一番落ち着ける空間。寮の、部屋の中だ。

ついているといっても心霊の類ではない。顔に飯粒がついているわけでもない。
俺の幸運ぶりに、雄吾が眉間にしわを寄せただけのことだ。


「なんかって、なんだよ」

「…………七福神」


なんでやねん。正月かい。


「即座に思い出すことができなかった……若年性認知症か……?」


何やら不確かなことをつぶやいている。もしも雄吾がそうだったら、俺は何年も前から重症患者だ。
にしてもなぜにこいつの頭はこれほど固いのだろうか。四六時中こんな俺と一緒にいるというのに。


「で、お前は結局何位だったんだ」

「……61位以内」


遺憾ながら笠井の表現を使わせてもらった。


「へえ……笠井には及ばないが、前に比べればすごいできじゃないか。喜べよ」


確かに以前の自分と比べるとすれば、おびただしい成長だ。

しかし今までのテストでは、はっきり言って俺は本気で勉強したことがなかった。それで安心していたのだ。本気でやりゃあ俺だって……みたいな。

そしてその理想(妄想?)は打ち砕かれた。本気でやって、この状態だ。


「俺に比べ、咲はやればできるタイプなんだな」

「……あいつはな、もっと頑張れる。もっと上を目指せると思う。多少なまけ癖があるとこは否めないがな」


雄吾は遠い目をして言った。そして、それきり黙り込んでしまった。

野性的な勘が発達した俺には、雄吾がその言葉に多くの意味を含めているように感じられた。
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