アラサー女子は甘い言葉に騙されたい
9話「蒼色」





   9話「蒼色」



 手を繋いで歩く彼は、少し前までは出会うはずもなかった相手。
 傷心しなかったら、ホストクラブに行こうとしなかったら出会えなかった相手だと思うと、不思議でしかたがない。けれど、これが出会いというものなのだな、と吹雪は思った。

 周は細身の黒ズボンに黒のスニーカー、長袖のシャツにぶかっとした薄手のジャンパーを羽織っていた。細身の体がさらに細く見える。モデルのような顔をしているため、歩いていても目立つ存在だった。けれど、隣には手を繋いで歩いている女がいると、周に向けられていた視線はその女にも向けられる。
 吹雪はその視線がとても怖くて、あまり気にしないように歩いていた。けれど、すれ違う際に何か話し声が聞こえるとビクッとしてしまう。

 年下の男の子。自分とは釣り合わない存在なのはわかっている。けれど、心が痛むのは何故だろうか。
 吹雪は自分のこの気持ちが何なのか、もう隠せなくなっていた。





 周が連れてきてくれたのは、和風の家具や雑貨が多くある茶屋のようなお店だった。餡蜜や抹茶などもあるが、コーヒーや紅茶、ケーキなどもある和風カフェのようだった。
 障子から入る優しい日差しがとても落ち着いた雰囲気を出している店内。女性客も多いようでカップルも沢山居た。


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