夢だらけのJKから腫瘍が見つかり入院生活へ

文化祭

文化祭当日。
私はやり切った!!堂々と演じた!!後悔は1ミリも無い。

 楽しかった。始まる前に、衣装を着て化粧をした時も、開演直前の私も含めて皆んなの緊張感とワクワク感。いつもとは違う体育館の匂いや雰囲気。
 
 舞台袖から観た、友人や先輩達の演技。実際に私が舞台に立って台詞を喋った時の浴びたライトの光と客席の眺めは一生忘れないだろう。

 



 演劇の公演の後は、友人達と軽音部を観に行ったり、各文化部の活動を面白く見た。

 2年生の屋台を回ったり、1年の各教室で催しているゲームや研究発表やお化け屋敷を楽しんだり、時間によっては自分のクラスの受付をしたりした。

 
 とても楽しい2日間だった。友人達には誰にも言ってない。言わないつもりでいたんだけど、やっぱり伝えた方が良いのか悩み中。2日目の文化祭終了間近に、同じクラスの仲の良い友人から声がかかった。

 
「ねえ!蒼(あお)この後のクラスの打ち上げ行くよね?駅横の焼肉バイキングだって。待ち合わせて行こうよ!何着ていく?」

「うん、一緒に行こうよ。電車の時間合わせて行こう。服はいっぱい食べれるように、ワンピースにジージャンかなぁ」
 
「おっいいじゃん!じゃあ私もお揃いでそれにしよう!じゃあ詳しくはLINEで知らせるね。あれ?部活は打ち上げ無いの?」

「明日昼過ぎスイーツブュッフェに決まった」

「連チャンじゃん!激太り注意ね。制服可愛く着れなくなるよ」

「だよね。でもついつい食べちゃうよね」

「だね~!部活の片付け行ってくるね。急がないと間に合わなくなっちゃう」


友人は、急いで走り去っていった。私は、喧騒に紛れて1人屋上に登った。何だか上から学校を見てみたくなったから。登りきり重い扉を開けて、柵の方へ。

 夏も終わり、秋っぽく少し涼しく爽やかな空気。最近は忙しくて、ゆっくり空も見てなかった。


「あーもう秋なんだなーーー!」


柵にもたれ掛かり、忙しく動いている皆んなを上から見下ろしてると、涙が込み上げてきた。どうせ1人だし、泣いても良いかなぁ頑張ったご褒美だ……

 1人屋上から無言で下を眺めて、涙を流した。




 背後からカメラのシャッター音が聴こえた。


「ごめんね。とっても綺麗だったからついついシャッターきっちゃってた。俺、君よりも前から反対側に居たんだよね。上から皆んなの写真撮ってたわけ。青春だよねー」

「あなたは……」

「俺は写真部で将来はカメラマン志望だから、色々撮ってるってわけ。同じ学年だよ。君と違って俺は余り目立たないからね。知らないでしょ」

「Fクラスの五十嵐夕樹君だよね。有名なフォトコンテストに受賞したって聞いたよ」

「おっ!蒼井さんに知って貰えてたなんて!嬉しいな」


五十嵐君が近づいてくる。私は涙を拭くためにポケットに手を入れてハンドタオルを手にした時、目に布の感触。


「やったね!俺の方が早かったね。カメラマンは素早く無いと、シャッターチャンスのがしちゃうでしょ!
今日の舞台の蒼井さん、何だか一番輝いてたんだよね。最近、無理矢理笑顔作ってるっぽくみえててさ。心配だったんだ……気持ち悪いよね勝手に心配されても。ごめんね」


何だか凄くストレートな五十嵐君の言葉に、私もつられてストレートに気持ちを吐き出していた。


「私ね文化祭終わったら入院するの。耳下腺腫瘍だってびっくりだよね。本当驚いたよ、手術して顔麻痺したり口が開きにくくなったり、するんだって。もう舞台も立てなくなるかもしれないんだよ。困っちゃうよね。誰にも言ってなくて、言えなくてね。親にも心配かけたく無いし何だか辛くてさ……」


早口で喋っている私を暖かいものが包み込んだ。


「蒼井さん寒くなったよね。ほら!あったかくなったでしょ。俺もあったかいよ。俺さ蒼井さん前から好きなんだ。キラキラ輝いてる感じがしてね、ついつい視線が向いちゃうんだよ。迷惑かな」

「迷惑じゃない……ありがとう」


五十嵐君から暖かさをもらった。寒くないよ。
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