クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
短編:ご褒美の夜
店内に足を踏み入れると、なんだかとても懐かしい香りがした。

 私たちが訪れたのは初めて出会うことになったあのバーだった。そのときとまったく変わらず、私好みの雰囲気が漂っている。

「お酒が飲めないのが残念です。ちょっとだけでもだめなんでしょうか」

 先導してくれた夏久さんに言うと、私の手を引きながら笑ってくれる。

「飲もうとしても飲ませないからな」

「じゃあ、離乳食が始まってからは?」

「だめだ。せめて幼稚園までは我慢してくれ」

「長いですね……」

「そんなに酒好きだったか?」

「夏久さんと飲むお酒が好きなんです」

「……そんなことを言ってもだめなものはだめだからな」

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