クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 ふ、と笑い声がこぼれる。

「夏久さんって、とっても幸せな匂いがしますね。……安心します」
「匂いって言われると、喜んでいいのか悪いのかわからないんだが……」
「褒め言葉です。その……一応」
「なら、喜んでおく。雪乃さんは匂いフェチなのか?」
「どうでしょう……? こんなふうに思ったのは夏久さんだけなので」
「そういうのを殺し文句って言うんだ。知ってたか?」
「……殺し文句だったんですか?」
「俺にとってはな」

 たぶん、そんなささやかなやり取りでもっと心の距離が縮まった。

「……雪乃さん」
「夏久さん」

 呼んで、呼ばれて、身体だけでなく心まで重ねて――。

(……人を好きになるって、こういうことなんだろうか)

 この気持ちに一番ふさわしい言葉を見つけ、心の中で告げてみる。

(――愛してる)

 本当に、とても幸せなひと時だった。

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