クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
・少しの希望

 今日は定期健診の日だった。
 同行した夏久さんは、やっぱり私以上に真剣に先生の話を聞いている。

「問題なし、ですね。元気に育っていますよ」
「そうですか……。よかったです」

 少し大きくなり始めたお腹を、夏久さんが優しい目で見つめてくる。
 そのことにきゅんとしたけれど、すぐに考え直した。
 見つめられているのは子供であって、私じゃない。

「食事には気を付けているんですが、これからほかにするべきことなどありますか?」
「そう今までの生活と大きく変える必要はありませんよ」

 相変わらず夏久さんは私の代わりに話をしてしまう。
 おかげで私から先生に聞くことがなにもない。

「ああ、ひとつだけ」
「なんですか?」

 夏久さんが心配そうに身を乗り出す。
 子供に関しては本当に大切に思ってくれているのだと、そういう態度から感じ取れた。
< 85 / 237 >

この作品をシェア

pagetop