sweetな彼とbitterなハニー
bitterなハニー

 今年もこの季節がやってきた。

 三年前の初めてのこの季節に私は、逆バレンタインを受けて人生で初めての彼氏が出来た。
 その彼はいま私の目の前で社内のお姉さまや私より下の新人さんたちに囲まれてチョコをもらっている、優し気な雰囲気の王子的ビジュアルのイケメン。
 そんな同じ部署で働く先輩で、私の新人教育を受け持ってくれた佐々木柊吾である。

 大きな化粧品会社の広報宣伝部所属のイケメンな彼はメンズ部門の社外広報担当で社内だけにとどまらない人気者だ。

 そんな彼がどうして私みたいな目立つタイプでもないごくごく平凡な事務方OLに逆バレンタインなんて方法で告白してきたのか、お付き合い三年目になる今でもはっきり言って分からない。

 私三橋涼音は大学を卒業して、この大手化粧品メーカーのフィーナの広報宣伝部の社外広報担当の専門事務員として在籍している。
 いろいろと忙しい社外への広報活動の補佐的な立ち位置だ。
 資料の作成、新商品のサンプル管理、外に行く広報のための経理処理などがお仕事。
 同じデスクの島にいるので、彼が沢山のチョコレート貰う光景は毎年見てきた。
 三年目ともなると、もう恒例行事の一環としか思えない。
 お付き合い翌年の去年こそ、なんか面白くないなんて感じていたけれど。

 今年は、なんだか凪いだ海のような感じであまり感情が動かない感じだ。

 どうせ分かり切ってるその光景を思い浮かべた時、私は今年のバレンタインの方向性を決めた。
 みんなと同じじゃつまらない、だって私は彼女なんだもの。
 だから、私は今年に関してはこう彼に宣言していた。

 「どうせ沢山ちチョコもらうんだから、私からは口直しにおせんべいにするわね」

 バレンタインまえの先週の週末、彼の部屋にお邪魔していた時そう宣言した私に、彼は穏やかに微笑んで返したのは意外な一言だった。

 「そうか、待ってるよ」

 しかし、同じ職場で同じチームで働く先輩後輩。
 配属先での直属の上司にもなってしまった彼との関係は、彼の人気ぶりから考えて隠すことにした。

 女子のやっかみほど面倒で恐ろしいものは無い。
 恋愛が絡むと、女同士は大変なのだ。
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