守るべきは・・・誰
4】

☆☆陸···side


いつものように
銀行に出勤して
仕事をこなしていると
携帯がなった
誰だ?
知らない番号だ。

いつもなら個人の携帯に
知らない番号から
かかっても、でないのだが
なぜか、通話ボタンを
押していた。

「木原さんの携帯ですか?」
と、言われた。
女性の声だ。
「‥‥はい、木原ですが
    どちら様ですか?」
「わたっ、私は
安藤 心春(あんどう こはる)です。
覚えて‥‥いますか?」
「えっ、心春?って、あの心春か?」
「はい。」
「そうか。で?心春がどうして?」
「お願いがあって電話したの。」
「お願いって?」
と、聞きながら
近くの仲間に手で
休憩にいくと合図して
席を離れた。

控え室に入り
話の続きをすると‥‥‥‥‥

心春は、重度の心臓病で
長く生きていられない
だから、俺に側にいて欲しいと言った。

大学の卒業前に
心臓病が悪化して
俺に迷惑をかけると
思い別れを切り出した······と。

俺達は、高校で出会い
付き合いだした。

大学も同じ大学に進み
付き合いも順調で
俺は、大学を卒業して
仕事を覚えたら
心春にプロポーズをするつもりでいた。

だが、大学4年になった夏に
心春から別れを切り出され
俺は、何度も理由を聞いた
すると・・・・
「別に好きな人ができたの
その人と生きて行きたい。」
と、言われて
俺は捨てられた。

その時は、荒れていたが
銀行から内定を貰い
俺は、冷静さを取り戻して行った。

経済学部の俺と
文学部の心春は、
大学内で会うことは少ない。
と、言うか
別れてから、一度も合うことは
なかった。

それは、心臓病で心春は
入院したからだと
はじめて知った。

俺は、仕事を早退して
心春が入院している
病院へ向かった。

心春の病室に入ると
沢山の器械をつけられて
ベッドに横たわる心春がいた。

心春は、俺を見て
ポロポロと涙を流した。
痩せて、小さくなっている
心春の手を思わず握りしめた。

「ごめんなさい。
あんな風に別れたくせに。
陸を頼るような事をして。」
「正直、なぜ?と思う気持ちと
まさか?と思う気持ちがあって。」
と、話すと
心春は、俺の手に指輪が
あるのを見て
「結婚したんだね。
そんな人に、こんな事を
お願いして、本当にごめんなさい。
忘れてくれて、いいから。」
と、慌てて言うから
俺は、
「大丈夫。
俺の奥さんなら、
ちゃんとわかってくれるから。」
と、言ったが·····

心春は、
でも・・・・とか
ダメだよ・・・・とか
言っていたから
「本当に、大丈夫だから。
心配するな。
心春の両親は、来てくれないんだろ?」
と、言うと
心春は、悲しそうな顔をして頷いた。

俺は、その顔を見て
尚更、俺がついてないと
って強く思ってしまい
また、近い内にくるから
と、伝えた。

結月の気持ちや
結月の想いを
考えることもせずに
俺は、俺の意思だけで
心春に付いていてあげようと
思ってしまった。

自分の家庭を壊すつもりも
なかったし
心春に気持ちが
あるわけでもないから
自分は、間違っていないと
思いきっていた。
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