エリートパイロットの独占欲は新妻限定
ふたりの未来のはじまり



三ヶ月前――。

優しい光が差し込む午後、智也は静かな病室に由宇の父、和幸とふたりでいた。


「真島、俺もそろそろ限界らしいよ」
「なに言ってるんですか。元気になって、また一緒に飛ぶって言ってたじゃないですか」


弱音を吐いた和幸を激励する。

和幸の顔色がこのところ優れないのも体がどんどん細くなっているのも智也は気づいていたため、油断すると自分まで心が折れそうだった。


「自分の体は自分が一番よくわかってるからね」


ポツリと呟いたひと言になにも返せず、智也は唇を噛みしめる。


「俺の人生に悔いはないが、由宇のことは気がかりなんだ。たったひとりにしてしまうからね」


和幸は遠い目をして窓の外へ視線を投げた。
和幸の娘である由宇のことは、智也がパイロットとして彼と一緒にフライトするようになったときから話に聞いて知っている。かわいい自慢の娘だと、優しい顔をして話す和幸をいつもそばで見ていた。

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