エリートパイロットの独占欲は新妻限定
特別な夜はとびきりロマンチックに



四月中旬。由宇たちが入籍してから三週間が経過した。

佐奈をはじめとした大学の友人たちは、新社会人として研修や仕事に奮闘中の毎日を送っている。その様子をメッセージアプリのグループトークで聞きながら、由宇も就職活動に余念がない。なんとか仕事を見つけて、自分ももっと成長したいのだ。

香澄から頻繁に送られてくるメッセージで煌びやかな人たちに囲まれた智也を知るたびに、焦りにも似た気持ちになる。

香澄たち同僚のようにもっと大人になりたい。
それもこれも智也にふさわしい女性になるためにほかならなかった。


「しっかし本当に立派なマンションだねー」


佐奈は物珍しい顔でため息交じりにリビングをぐるっと見まわした。入籍して初めて佐奈が訪れたのだ。

ともに大学のデザイン工学科を卒業し、佐奈は大手建設会社に就職。新入社員研修がひと段落し、久々に会おうとなった。


「そうだよねー」


淹れたばかりの紅茶のカップを口に運びながら由宇もうなずく。

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