ごめん、好きだった
川津 愛奈
スマホの通知がなる。


珍しい。私なんかにメールだなんて。


アプリを開いて、自然と顔が緩む。

好きな人からのLINEだった。


(サッカー、今シーズンは2人で全部観に行こう!!)

急いで返事を打つ。
少し誤字りながら。

(もちろん。)


14歳。中学生3年生。元不登校。


同性愛者。


幼なじみの彼女に長い片想いをしている。



彼女は同性愛に否定こそないけど、この恋は叶わない。
私は長いこの関係が途絶えることが怖くて。
この思いは伝えていない。
叶うはずがない。
女の子同士の恋なんて。



学校に行かなくなったことに理由なんてなかった。

ある朝行きたくなくなった。

久しぶりに行った時、クラスメイト理由を聞かないでいてくれた。
でもそれは優しさなんかじゃなかった。
自分に興味が無いだけだ。

親友だと思っていた子も連絡は減った。

全部上辺だけだと知った。
知ってしまった。

そうなると余計に行きたくなくなった。
誰も友達がいない。
居場所がない。
そんな所に行く理由が分からなくなった。

気にするな、なんて言われても
無理だった。

誰かが自分の悪口を言っているような気がして。


頑張って


なんて上辺の優しさなんて要らなかった。
全部全部嫌だった。

そんなふうに考えてしまう自分も。


でも
彼女は違った。

何もせず、けどただほっとくのではじゃなく。

そんな優しい彼女が大好きだった。


さすがに3年に上がって、行きたい高校もあり、休む訳にはいかなくなった。

気にしないなんて出来ないけど

彼女のことで頭がいっぱいになった。

頭がいい彼女と一緒に勉強して。



幸せだった。
彼女と時間を過ごすことが。



(ね、彼氏出来た!!)


なんて返したらいいか分からなかった。



私には彼女しかいなかった。
でも彼女はそうじゃなかった。


そんなことは分かっていた。
私が学校から逃げていた間、彼女は学校で他の人との時間を過ごす。
私の知らない時間があるのは当たり前だ。

知っていた。考えないようにしていた。


他の人と時間を過ごす彼女は私といるよりも幸せそうに見えた。


それが余計に辛かった。


離れていく彼女を見ていることしか出来なかった。

私は今の関係を壊すのが怖かった。



私、君のこと好きなんだ。


そう伝えたら君は優しいからきっと、困った顔をして笑う。

だから変わりにおめでとうとおくる。


伝えきれなかった好きという気持ちを込めて。



ごめんね、好きになって。
大好きだったよ。
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